*本会の会員は会則により以下のようになっております。
『この会の会員は次の①、②をともに満たすものとする
① 卒業後 3 年目以上、10 年目以内の医師、もしくは家庭医療後期研修プログラム開始後8 年以内の医師であること。
② 日本プライマリ・ケア連合学会員であること。』

第6期若手医師部会「クルー100人プロジェクト」各チームへ興味のある方はこちらからメーリングリストへご加入ください!
「クルー100人プロジェクト登録フォーム」”こちらは初期研修医から加入可能です!!”
海外チーム・地域ごとコミュニティチーム・病院総合医チーム・世代ごとコミュニティチーム・多科・多職種連携チーム

2015年7月13日月曜日

『家庭医療を徹底解剖~これからの医療について語ろう~』報告

ジェネラリスト80大学行脚プロジェクトスタッフの杉谷です。
6月27日(土)に鳥取大学で開催された勉強会の報告を頂きましたので紹介します!!
報告書を作ってくださった杉山さん、李さん、坂戸さん、有難うございました!
***********************************************************************
『家庭医療を徹底解剖~これからの医療について語ろう~』
 
【日時】6/27(土)13:00~18:30
【場所】鳥取大学米子キャンパス(アレスコ棟261教室)
【講師】松下 明先生(奈義ファミリークリニック所長、日本プライマリ・ケア連合学会理事)
    金 弘子先生(麻生飯塚病院後期研修医)
    細谷 恵子先生(鳥取大学医学部附属病院 胸部外科)
【協力大学教員】尾崎 米厚先生、朴 大昊先生
【参加人数】医学生11人、看護学生2人、医療従事者2人、医師3人
【主催】国際保健友の会ハクナマタタ
【共催】日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師部会 ジェネラリスト80大学行脚プロジェクト
 
【内容】
14:00~14:05 開会(杉山)
 
第1部
14:05~14:25 アイスブレイキング(李悠)
14:25~14:50 ミニ講義「家庭医療のイメージ」(金先生)
14:50~15:20 講義「地域での経験」(金先生)
15:25~16:15 ワークショップ「死に場所の選択」 (金先生、細谷先生)
 
《第1部内容》
① ミニ講義「家庭医療のイメージ」
「各国の比較からプライマリケアレベルが高い国ほど寿命が長く、医療費が安い」というデータをもとに、プライマリ・ケアの必要性、定義を概説していただいた。
 
② 講義「地域での経験」
家庭医を目指す後期研修医 金先生の日常のストーリーから、実際に患者さんとどのように関わりを持ち、どのように考えながら診療を行っているかについて、具体的なエピソードを盛り込み解説していただいた。その他、鳥取大学卒業生で、現在、家庭医として地域で働いている医師のインタビューした内容も盛り込まれていた。
 
③ WS「死に場所の選択」
最初に講義があり、臓器別専門医として大学病院で働く細谷先生の視点、在宅、施設、病院で働く金先生の視点から見た「看取り」のケースを挙げていただき、「死に場所」をテーマにグループワークを行った。
出生数<死亡数という現実を抱える日本でも、実際に家族と「死に場所」について話す機会を設けている人は少ない。病状の進行から、希望した死に場所での死を迎えることが叶わないことも多いという。
グループワークでは、患者さんが希望している「在宅」での死に向けて、医師・コメディカル・学生の視点から、どのようなケアが必要かについて話し合った。医学的側面に加え、心理的側面、社会的側面から考え、お互いに様々な「気付き」と向き合うことで、議論は非常に白熱するものとなった。
 
第2部
16:30~17:40 講義「家庭医療のウラ・オモテ」(松下先生)
 
《第2部内容》
①プライマリ・ケアと専門医療
家庭医療:地域~臓器 臓器別専門家:家族~臓器 
医療はさまざまなスタッフや専門家がいる。そのそれぞれの役割や視点について十分理解し、お互いの協力を惜しまないことで、患者さんにより質の高い医療が提供できるようになる。
 
②現代の家族問題と地域協力
共働きする家庭が増えたことで、昔より家族が不安な状態で在宅をする人が増えている。家庭医療では、そのような家族の力を引き出すための方法を伝える。また、地域に住む60歳から75歳に有償ボランティアの協力をしてもらうと言った、社会システムの構築も行う。
 
③家庭医療を特徴づける3つの柱
1)患者中心の医療 2)家族志向ケア 3)地域包括医療
患者の訴えに対して、病態のみにとらわれず、家族や感情の変化にまで幅広い視点から原因を探っていく。そのためには、患者さんとの信頼関係は必須であり、様々な感情の機微に敏感に反応し、深く共感することや、患者さんの裏に「家族の木」をイメージし、問題を紐解くことを患者さんとともに考えていくことが診療を行う上で大切になってくる。
 
17:40~18:10 質疑応答
 
18:10~18:15 閉会
 
【参加スタッフの感想】
①大学病院での教育を受けてきたことの影響かもしれないが、開業、個人診療所で働くというのは、大学での専門的教育を受けてきた先に存在するものだというイメージが強かった。
今回のセミナーを通して、そのイメージは大きく変わり、また家庭医療が関わる仕事の範囲に驚かされた。時には、地域の医療政策にも関わり、時には、患者さん個人の家庭事情までに踏み込むことで解決策を見つけていく。そして、人の死と向き合いながら、患者さんの人生に一番近い場所での仕事なのだと感じた。コミュニケ―ションが取れること、寄り添うことが出来ること、家庭医療をやっていく上で欠かすことが出来ない。そして、もちろん、それ以上に医師であれば医師としての、看護師であれば看護師の、それぞれの専門性を磨くことこそ、患者さんの幸せにつながることだということを強く実感した。
今回、コメディカルスタッフの方や、看護学生の参加もあり、お互いに違う視点でWSが行えたことで、議論に幅ができ活発なものになった。時間の関係で出し尽せなかった部分や話足りない部分もあったので、また勉強会・セミナーの開催が出来たらと感じている。
 
②本日は、奈義ファミリークリニックの松下先生をはじめ、麻生飯塚病院の金先生をお招きしての勉強会を運営させていただいた。
 大学の座学を全て終えた今、「家庭医」というとどうしてもどこか遠い存在のように感じ、意識ある人だけが目指すという考え方が少なからず自身の中にあったが、実際は最も人との距離が短く、地域に根差した存在であり、かつ今の日本に必要とされている医師なのだということを今回の勉強会を通し、痛切に感じた。
 各々の先生が臨床現場で体験された症例を紐解き、医師がここまで人に介入するものなのかと懐疑的に見てしまったほど患者さんに寄り添う姿は、元来自分自身が目指していた医師のあるべき姿だったのかもしれない。
 大学での環境に甘んじ、義務感を感じながら物事をこなしていく中で、何か大事なものを忘れがちになっていく。それを気付かせてくれた貴重な時間となった。
 家庭医という存在は少し古くさいように感じるかもしれないが、その古くささの中に患者本位の医療が展開されている。かつての日本の医師がそうであったように赤ひげのような医師が再び全国で活躍されることを願って止まない。
 
③金先生、細谷先生による死に場所の選択についてのお話について、非常に印象的だったことは大学病院の臓器専門医の方でさえも家族志向の医療の必要性を口にされていたことだ。例として末期乳癌患者の化学療法、緩和ケアを挙げられており、治療への意見を継時的に変化させていく患者に対して、果たして通院での治療は可能なのか、死にゆく母を見る家族の思いに目を向けられるか、患者本人だけでなく残される家族も「この病院でよかった…」と思える医療ができるのか。すべては家族志向のケアという言葉が鍵を握り、いかに日本に必要とされている医療モデルかということがうかがい知れたと思う。特に、がん患者の増加に伴い、遺伝カウンセリングという形で家族志向のケアを行う機会も増えていくだろう。
 松下先生による家庭医療のお話では今まで曖昧な捉え方をしていたプライマリケア医と家庭医の役割について、世界各国のシステムの違いを踏まえクリアカットに教えて頂くことができた。また、総論的なことだけでなく実際の外来の現場で使える行動変容のテクニックはとても新鮮に感じられ、それらのテクニックを長年付き合ってきて捉えた患者の性格によって使い分ける、このことだけでも専門技術といえるのではないかと感じた。
 自分はいつか自分の生まれ故郷に戻って診療所で村民の生活を支えて恩返しをしたいという夢がある。専門医として見る疾患はせいぜい限られていると思うが、家庭医をしている以上新たな人と出会い、深く関わっていくほどに同じ症例は二つとしてない、ということが分かるのではないか、そこに家庭医の底知れぬ楽しさがあるのではないかと感じた有意義な会でした。 
ご講演いただいた先生方に心より感謝致します。ありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿